#123 働き方と余暇 その3(2025年11月24日)

【つぶやき】

 みなさんは、今年ネット上で流行った「残業キャンセル界隈」や「静かな退職」という言葉をご存じだろうか。 「〇〇キャンセル界隈」は、Z世代のSNSで共感を呼び、同じ価値観の人を集める言葉として流行した。
「風呂キャンセル界隈(入浴するのが面倒になり、やめてしまうに共感すること)」に始まり、「残業キャンセル界隈」が登場。残業拒否は、仕事があるのにけしからんと思うか、プライベート重視も止むえずと思うかどちらだろうか。
また、「静かな退職」は、アメリカ発で世界に拡散した「働きすぎ」を忌避する自衛的行動。
今、働くということにも変化のきざしが現れている。

【コメント】

 高市首相の「ワークライフバランスを返上する」「3時に官邸入り」は、世間を騒がせたが、私の考えもヒメやジイのコラムの通りだ。「野党の質問提出にも課題あり」のようだったが、これを機会に、皆さんも高市発言を話題にして、働き方や余暇について議論してほしいと思う。

 余暇学研究の上で、労働時間の分析が持つ意味は、労働の「残りの時間としての余暇」が、現実的にどのような状況にさらされているかを知ること、また、特に長時間労働の分析を通じて、長時間労働により何が失われたのかを見ることにある。
 そもそも長時間労働は、男女の役割分担あってこそ成り立つ昭和的発想に思える。健康、女性、家族、自己etc.・・・犠牲にしてきたものも多い。今や女性も働き、DX化も進んでいる訳だから、もっと効率的に生産性を挙げる工夫を実行に移すべきだ。(高市さんの「衆議院宿舎のホームFAX、10枚ぐらいで紙がガーッと詰まる」という発言には、唖然とさせられた。いまだにFAXなのか。)
 さらに、労働時間の分析は、働く人の労働に対する意識も見せてくれるはずであると考える。そして「日本人が働くことをどう思っているか」を解明することは、その裏面として「日本人が余暇をどう思っているか」を示してくれる。我々は、この二つの意識(労働意識、余暇意識)を明らかにすることにより、その先に日本人の生活と文化の地平がひらけると考えてきた。

 ここで冒頭にあげた、今年ネット上で話題になった二つの言葉について触れて「働き方と余暇」について考えてみたい。 まずは、「残業キャンセル界隈」。「〇〇キャンセル」は、本来やるべきことをやらないという選択を認めることにある。同じ価値観を持つ仲間を見つけるスラングとしてSNSを中心に広まった。「残業キャンセル界隈」は、残業せずに定時で帰るという行動を積極的に取るというものだ。この行動には確かに賛否両論ありそうだ。上司からは、「やる気なし」「残業=悪と誤解」「仕事の責任はどうするのか」と当然批判があるだろう。しかしながら、こうした若者をも前向きに捉えてみれば、勤務時間内の効率的な働き方の実践、余暇時間の充実による視野の拡大を考えるきっかけになるのではないか。労働時間重視から成果重視へと評価制度を転換していき、勤務時間内に成果を上げ、残業は極力しないというスマートな働き方への努力が、個人にも企業にも求められる。

 一方「静かな退職」は、出世や昇進を目指さず、職場で任された仕事だけを最低限にして、必要以上に働かないことを意味する。パンデミック中、リモートワークにより、仕事中心の生活からプライベート重視へと意識が転換し、長時間労働や会社への過剰な貢献を厭わないような「ハッスルカルチャー」を見直すようになったことを機に広まったと言われている。「静かな退職」も、やる気のなさやエンゲージメントの低下と見なすのではなく、「仕事が人生のすべてだ」という考え方から距離を置き、人生のキャリアを主体的に選択するものと、ポジティブに考えると違った世界が見えてくる。
 みんながこうした言葉の流行の良し悪しを語ることによって、「働き方と余暇」に関心が集まり、本質に迫る議論が盛り上がり発展していくことを期待したい。

《執筆:マダム》


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