#010 日本人は世界一の余暇貧乏(2022年2月4日)

【つぶやき】

日本は「お金持ち」の大国である。
経済の規模で言えばアメリカ、中国に次いで世界第3位。
一人当たり国民総所得でも、大国ではアメリカ、ドイツ、オーストラリアなどと肩をならべ、日本は「お金持ち」の大国である。

経済の規模で言えばアメリカ、中国に次いで世界第3位。
一人当たり国民総所得でも、大国ではアメリカ、ドイツ、オーストラリアなどと肩をならべ、
1人38,000ドルで、中国の8,700ドル、エジプトの3,000ドルのはるか上を行く。
(因みにアフリカのコンゴ民主国は460ドルしかない、このおそるべき格差。)

だが、目をお金の豊かさから「時間の豊かさ」に移してみると、
何とも情けないビンボー国であることが見えてしまう。

そもそも労働時間が長く、大国の中では断トツの労働大国である。
残業は野放しで、「過労死」する人が後を絶たない。
週休2日制は発展途上、長期休暇に至っては、
欧米の半分にも届かない最貧国を誇って?いる。

どうしてこんなんことになったのだろう。

【解説】

 日本が世界第3位の経済規模を持つ大国であることは確かだが、しかし、それは深刻な凋落の段階にあることを押さえておく必要がある。平成の始まりのころの日本は、アメリカに次ぐ第2位で、世界経済の16%を占めていた。こんなちっぽけな、人口から見れば世界の2%ぐらいで、それだけの実力があったのだが、平成が終わって令和になってみたら、躍進著しいお隣りの中国に抜かれ、その数字はわずか6%まで低下している。

 さらに言えば、平成元年の日本企業の「時価総額」を見てみると、NTTが1,638億ドルで世界トップ、50位までの間に32社が入っていた。それが何と平成の終わりには、トヨタ自動車1社のみがやっと34位に名を連ねているだけなのだ。トップ3は言わずと知れたアメリカのアップル、マイクロソフト、アマゾンの3社である。落ちれば落ちたもので何とも悲しくなる。

 経済大国が揺らいでいる中で、余暇貧国ぶりはさっぱり改善されていない。日本人の長時間労働は世界的に有名で、働き過ぎて過労で死んでしまう日本特有の現象として、アメリカのウェブスター大辞典に‘karoshi’という用語が登録されているほどである。一週間に49時間を超える長時間労働をこなした人の比率は日本が際立って高く、2005年には40%近かった。その後は漸減して現在は27%ほどである。アメリカは24%程度でちょっと長いが、ヨーロッパでは2割を超える国はなく、北欧の国々になると7~8%というところ。ヨーロッパでは例外的な残業が日本人では常態化しているのだ。

 週末の休みも少ない。土日休みというのは今や世界の常識だが、日本では土日がみんな休みになる完全週休二日制は、1995年には40%しかなかったのが2020年には58%まで広がった。これに隔週2日休みや月1回2日休みを加えても勤労者の7割に届かない。土日のデートもままならないのでは、若い世代のカップル作りも難しく、出生率が下がるのも無理はない。

 長期休暇となるともっと悲惨だ。フランスやドイツでは有給休暇は4週間、家族そろってバカンスに出かけるのが当たり前。太陽の恵みの少ない北欧になると、夏に6週間もの長期休暇を取って南の国に赴いたりしている。それに比べてわが方はやっと平均18日程度の有給休暇が与えられているが、それだって欧米に比べて短いにもかかわらず、その半分が放棄されている。有給休暇消化率は50%の辺りで長年停滞していて一向に上がる気配がない。日本の家族がどうもぎくしゃくしているのは、休暇を取って家族でしっかり関り合う時間が少ないせいではないかと思えてくる。

 昔から「時は金なり」というように、時間こそ究極の財産である。時間を、特に余暇を豊かにデザインできない人は、幸福な人生を送ることは不可能である。いくらお金を貯めてもあの世には持っていけないが、余暇は精神の糧となって、あの世にもつながっているのである。


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