#014 余暇を主題に社会運動(2022年3月14日)

【つぶやき】

世の中にはいろいろな「運動」がある。
運動会とか運動選手とか背筋運動のような運動、
これは英語でいえばエクササイズのこと。

他方、選挙運動とか労働運動とか赤い羽根募金運動なんて言うのもある。
これは筋肉を動かすのではなく、世の中を動かそうという運動である。
英語でいえばムーブメントということになる。

さて、余暇と縁のある運動はどちらだろうか。
ヒマがあるので、ちょっと外へ出て一運動してこよう…というのはよくある話。
余暇はさまざまなエクササイズに活用されている。

しかし、それだけではない。
余暇をテーマにした社会運動も立派に存在している。
余暇を社会問題の一つとして捉え、
余暇を追求して世の中を変えようという余暇ムーブメントに注目してみたい。

【解説】

 社会運動は、何らかの「問題」のあるところに生まれる。ロシアがウクライナに突然攻め込む。これはとんでもない大問題だ。人間同士が殺し合って何の意味があるのだ、平和こそ世界中の人々の願いである、平和の実現を!!と訴えるのは平和運動だ。

 人間にとって大切な木々の緑や清流や美しい浜辺が汚され、破壊され、失われる―これを何とかしたい、自然を大切にし、豊かな自然を取り戻すことが現代社会の課題だ、と訴えるのは自然保護運動だ。 貧困にあえぐ人たちの救済を目指す社会福祉運動、元気で賢い子を育てようという教育運動、悩める人々の魂の救済を志す宗教運動……問題のあるところ運動あり、と言ってもいいだろう。

 この欄で毎度申し上げているように、われらが日本人の(特に働く人の)余暇は貧しい。欧米に比べてめちゃ長い労働時間、土曜日曜の休みさえ完全ではなく、長期休暇に至っては、欧米人に言うのも恥ずかしい位のみみっちい休みしか取れていない。これが問題でなくてなんだろう。当然、余暇の充実のための啓蒙運動、余暇制度の整備のための政治運動が生まれて当然である。このページを主宰する「日本余暇会」は、余暇の拡大・深化を目指す運動体に他ならない。

 ここで押さえておきたいことは、余暇拡大運動のいちばんの当事者は「労働組合」であることだ。欧米の勤労者が持っている充実した休暇制度は、あちらの労働運動が長い戦いの末に獲得した成果なのである。その点、日本の労働運動は、どうも余暇問題、休暇制度への取り組みが弱いと言わざるを得ない。

 労働運動というのは「労働をしましょう!」という運動ではないのだ。逆に「労働をしません!」という運動であるはずだ。理不尽な、非人間的な、反社会的な労働は断固拒否します、合理的で人間的で社会の役に立つような労働を目指して、資本家・経営者に対抗しますというのが労働運動の役割である。だからこそ、労働組合には労働することを拒否して戦う権利―「スト権」というものが法的にも認められているのである。

 日本の労働組合が大同団結して1989年に「連合」(日本労働組合総連合会)を作った折りには、残業の削減や週休2日制の普及や長期休暇の拡大がスローガンとして正面に掲げられていたのに、大した成果も出せないまま、最近はこの手の要求があんまり前に出てこないように思われる。しっかりしてくださいよ連合さん、連合こそが余暇運動の旗頭になって当然だということを是非ともお忘れなく願います。


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