#020 余暇の原点は子どもの遊び(2022年5月14日)

【つぶやき】

春の天気は変化が激しいが、良い天気に恵まれるとホントに気持ちいい。
公園に行くと緑の芝生の上で、子どもたちが嬉々として遊んでいる。
中でも目立つのは、若い母親、父親に連れられた、いたいけな幼児たちだ。
よちよち歩いてすっころんで、それでもニコニコと立ち上がり、また歩き出す。
小さな身体いっぱいに、動くこと、遊ぶことの喜びを表して飽きることがない。

子どもたちはそこから出発して、どんどん遊びの中身を豊かにしていく。
身体を動かす遊びはもちろん、心を豊かに、頭を耕すいろいろな遊びに挑戦する。
それは少年期、青年期を経て、成人になってからの余暇生活につながって行く。
余暇の原点は、まずは子ども時代の遊びをしっかり遊びつくすことにある。

だが、いま、子どもの遊びはピンチ、それも大ピンチだ。
今の子どもたちは、私たちが子どもだったころに比べると、ホントに遊べているのか疑わしい。
確かにおもちゃも運動具も自転車も、いろんなモノは持ってはいるが、
仲間を集めて、自由に、勝手に、好きなように、心ゆくまで遊べているのかというと、
どうもそうではなさそうだ、いや断じてそうではない。

子どもの遊びは大人の世界に囲い込まれ、その商売の道具にさせられているのではないか。
それは大人の余暇のあり方にもつながっている。
子どもの遊びこそが余暇の原点だからだ。

【解説】

 第2次世界大戦で、今のロシアのプーチン以上に無謀な戦争に突入した日本は、多くの人命と国富を失い、敗戦の果てに焼け跡・闇市のみじめな生活を味わわされた。やっとの思いで復興を進め、1960年代からは経済の高度成長路線をひた走り、何度か躓きながらも今日の豊かな社会にたどり着いた…多くの方々は、押しも押されもせぬ経済大国となった日本の歩みを満足して受け止めているのだろう。

 しかし、経済成長がもたらした「豊かさ」の陰で、人間らしい暮らしにとって大切なもの、かけがえのないものが失われていったことも事実である。わかりやすいところで言えば、幕末以来、日本を訪れた外国人が異口同音に称賛した美しい日本の自然が破壊され、広範囲に痛めつけられ、見る影もなくなったところも少なくない。同様に、外国人に感銘を与えた日本人の優しい心情も、この頃はずいぶんと怪しくなった。そして、見事に消えてなくなったのが地域の子どもたちの自由な遊びである。

 1950年代の日本の子どもたち(筆者はまさにその一人だったが)は、どんな風に遊んでいたか。子どもたちは皆、地域の遊び集団に属していた。それは学校や大人が作ったクラブなどとは無縁で、子ども自身が毎日の遊びを通して作り上げたものだった。「ガキ大将」と呼ばれたリーダーに率いられ、年長の子から「みそっかす」と呼ばれた幼児たちに至るタテの関係で結ばれ、隣り町の子ども集団と「戦争」することもある強固な組織だった。子どもたちはそこで遊びの技術をみがき、集団行動における個人の役割を学んで「社会に生きる知恵」を知らず知らずに身に着けていった。

 何よりも重要なのは、この子ども集団は大人の支配や管理が及ばない「おとなお断り」の子どもの自治共和国であったことだ。当時、貧しくて仕事に追い立てられていた大人たちは、その存在にほとんど気づかず、気づいても「たかが子どものすること」とみなして介入しようとはしなかった。農村には子どもが自由に遊びまわれる里山が広がっていたし、車社会を迎える以前の都市にも、空き地や原っぱや路地裏などの子どもの「領土」が豊富に残されていたのである。

 高度成長は、子どもたちの「ガキ大将文化」や「路地裏文化」を解体し、裏通りにはどこにもあった貸本屋や駄菓子屋などの子ども専用施設を衰退させた。代わりに与えられたのがテレビやゲーム、高価なおもちゃ、大人が支配するスポーツクラブ、さまざまなお稽古教室、ゲームセンターや遊園地、TDLを代表とするレジャーランドである。子ども共和国は滅亡し、遊びというものは大人の管理下においてささやかに許される休憩時間になってしまった。

 遊びを奪われた子どもたちが成人になって、主体的で豊かな余暇生活を構築できるとはとても思えない。そこで今日、何よりも必要なのは子どもの自由な遊びを回復するための社会運動である。そこでは子どもの遊びの「指導」ではなくて、子どもとともに遊ぶ「支援」が求められる。

 日本余暇会はこのほど、子どもの遊ぶ権利確立のための遊びの支援活動の手引書として『プレイワーク入門』を編集・出版した。Amazonのオンデマンド出版なので、下記のURLをクリックすれば内容をチェックできるし、ワンクリックで購入もできる。ぜひ、この本をお読みいただいて、余暇の原点である子どもの遊びへの関心を深めてほしいと願っている。

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