#039 コロナの禍福その3(2023年7月24日)

【つぶやき】

コロナ流行を抑えるために「3密」を回避しましょう、
とアナウンスされるようになったのは2020年3月のことだった。

余暇に関する施設の多くは、緊急事態宣言下で休業を迫られ、
営業再開後も「新しい生活様式」にフィットしたかたちに変化することを
余儀なくされた。

そんななか広がったのが、イベントの配信だ。

配信が一般化したとき、会場に足を運ぶ意味は
どのようにとらえられるのだろうか。

【コメント】

 コロナ禍で無観客の開催となったイベントの多くは配信をおこなうようになり、音楽や演劇でも広がりをみせた。住んでいる地域や各々の事情で、これまでなかなか参加が叶わなかったひとびとにとって、朗報でもあっただろう。

 2023年の5月8日、ゴールデンウィーク明けにコロナは5類の感染症へ移行された。コロナの感染力が急激に低下したわけではなく、6月の段階でも再流行の兆しが確認されるなど、平常に戻ったとはいいがたい。とはいえ、イベント開催ではさまざまな制限が緩和されるようになり、スポーツの現場では「声出し応援」が解禁されはじめている。

 体育に代表されるように「スポーツ=するスポーツ」が、ある時期まで主流だったと思う。しかし現在では、「みるスポーツ」「ささえるスポーツ」という言葉を聞く機会も増えてきたのではないだろうか。かんたんにいってしまえば、スポーツを応援することも、スポーツ参加者をサポートすることも、広く「スポーツ参加」ととらえられるのだ。(少し補足しておくと、2022年3月に策定された第3期スポーツ基本計画では「つくる/はぐくむ」「あつまり、ともに、つながる」「誰もがアクセスできる」という新たな3つの視点が提示された。今後この連載でぜひ取り上げたい。)

 スポーツ選手のインタビューで、応援のおかげで頑張れたとの発言を聞くこともある。これからは再び、会場に足を運び、タオルを振ったり、応援歌を歌ったり…と、選手を視覚的・聴覚的に応援することができる。

 ふりかえってみれば、余暇の楽しみ方としてスポーツ観戦は歴史が深く、戦前の甲子園の写真をみてみると、球場で観戦する当時のひとびとの情熱に驚かされるほどである。現在でも高校野球をはじめとして、地元のチームが全国で活躍するのを心待ちにしているひとは大勢いるだろう。熱心なファンであれば頻繁に球場やスタジアムに赴き、詳細な試合展開ふくめて、隅々まで注視しているかもしれない。しかし、テレビや新聞、インターネットを通じて、選手の雄姿を知ることも多い。

 思えば、コロナ禍で画面を通してみる無観客試合や、観客数が半分に制限されたスタジアムの様子は寂しいものがあった。その場で試合に臨む選手もどこか心細かったに違いない。そのように考えてみると、やはり現場に集うファンやサポーターも、スポーツ参加者だったのだと腑に落ちる。

 今年の8月から9月にかけて、バスケットボールのワールドカップがフィリピン・日本・インドネシアで開催される。チケットは順調に売れているようで、満員の観客席をテレビやインターネットで確認することができそうだ。今後スポーツに触れるメディアは変化しても、試合会場で選手を盛りたて、スポーツの楽しさを可視化してくれる観客は、必要不可欠な存在であり続けるだろう。

執筆:ヒメ


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