#080 ペット その2(2024年9月14日)

【つぶやき】

ペットは、今や愛玩動物の域を超え、コンパニオンアニマル(伴侶動物)だ。

家族同然となった犬や猫への愛情は深く、ペットロスのダメージは計り知れない。

子どもたちにとっては、教育効果もあり。

家庭内に話題がないとぼやく熟年夫婦にとっては、まさに「かすがい」。

高齢者にとっては、心身の健康を保つ大事な相棒なのだ。

【コメント】

 ペットの犬や猫を「うちの子」と呼ぶ人は多い。自分の子どもを人前でかわいいと言ったり自慢したりするのは、いささか気が引けるが、犬や猫である「うちの子」のことは、人前で臆面もなく褒めても余り嫌味ではない。そんな愛され「もふもふ」の、かわいい顔やしぐさを何枚も写真に収め、スマホの待ち受けにしている方も多いのではないだろうか。

 今や犬猫の飼育頭数合計は、約1,591万頭(令和5年一般社団法人ペットフード協会調べ)で、子どもの数(15歳未満人口)1,435万人を上回っている。いつから犬や猫は、こんなにも愛玩されるようになったのだろう。

 NHKの大河ドラマ「光る君へ」で、藤原道長の妻、倫子(黒木華)が赤い紐のついた猫を抱いたり、追っかけたりするシーンがあった。平安時代、中国から渡来した貴重な猫は「唐猫」(からねこ)と呼ばれ、貴族や皇族など高貴な人たちに愛されていた。源氏物語の「若菜」には、唐猫が御簾から逃げ出しハプニングが起こるシーンが描かれている。

 江戸時代あたりになると、猫はネズミを退治してくれる有益な動物として、だんだんと庶民の間にも広まり、生活にもすっかり溶け込んでいたようだ。歌川国芳一派は、猫の浮世絵を多数描いているが、それが飛ぶように売れていたという。筆者は今年の初め、たばこと塩の博物館で開催された「江戸のおもちゃ絵」展を見にいったが、おもちゃ絵には、猫が衣を脱いでお風呂に入るなど擬人化したすごろくがあったり、猫の立ち姿にいろいろな着物を切り抜いて着せ替える紙人形(紙猫形?)などがあったりして、猫が江戸において身近で愛されている動物であったことに驚かされた。

 ペットブームは、戦後の高度成長期に始まる。生活が徐々に豊かになり、ペットを飼う余裕がでてきたからだろう。この頃からペットショップやペットフードなるものが登場し、高級な外来種を購入する人も多くなってきた。バブル前後の頃になると、ペットの小型化が進み、室内での飼育を可能にした。一軒家でなくとも、都心のマンションでも犬や猫と一緒に住めるようになった。現在、国土交通省によるとマンションの90%以上で飼育可能になっているとのことだ。

 犬や猫を室内で飼えるようになったことが、一層ペットと人間との距離を縮めた。ペットの気配を身近に感じ、様子を観察し、抱き上げたり、遊んだりするのは楽しいひとときだ。実際に自宅で犬や猫を飼っていない人でも、「もふもふ」好きな人は、SNS上のペット動画や写真を一日中見て、癒されるという。

 「ぺットセラピー」の研究も進んでいる。動物と触れ合うことで「幸せホルモン」のセロトニンやオキシトシンが増えることがわかっている。人間の生活に潤いややすらぎをもたらし、慰みになったりするペットたちは、医療施設や高齢者施設、最近では職場でも活躍中だ。

 ただ一方で、動物との共生社会への対処は不十分だ。虐待や放棄、殺処分だけでなく、飼い主の高齢化なども今後課題となろう。人と動物が共に幸せに暮らせる社会にするには、更なる仕組みづくりが必要だ。

《執筆:マダム》


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