#044 睡眠 その2(2023年9月14日)

【つぶやき】

最近、大谷君の活躍とともに、その睡眠時間が話題になった。

「寝れば寝るだけいい」と彼はいったが、あの身体能力は睡眠力あってのことか。

一方、私の周りでは、睡眠時間が確保できない、あるいは年齢が上がると共に眠れなくなるというような悩みをよく聞く。

最近、何かと話題になる「睡眠」であるが、日本人の睡眠時間ってどうなっているのだろう。

【解説】

 日本人の睡眠時間は、世界の人と比較して少ないと言われる。2021年のOECD(経済協力開発機構)の世界における時間の使い方に関する調査報告によれば、1日当たりの平均睡眠時間が最も長い国は南アフリカの9.21時間で、2位は中国の9.03時間、3位は米国の8.85時間だそうだ。日本人はというと、7.36時間で短く、お隣の韓国7.85時間も似たような結果だ。そうした中で注目すべき点は、世界的な睡眠時間は、女性の方が長く男性は短い傾向にあるのに対して、日本は反対で、女性の方が短く男性の方が長いのだ。最近では、協力的なパパや家事男子も増えているが、それでも日本の女性の家事育児の時間は男性に比較すると圧倒的に長く、そのことが原因なのだろう。

 国内の睡眠時間の経年変化を見るのによく使用される総務省統計局の社会生活基本調査では、男女平均7.7時間となっている。1976年以来減り続けてきた睡眠時間が、コロナ禍の2021年では、調査以来始めて増加したというのだ。6月のつぶやき余暇「コロナ禍の至福」で書いた通り、在宅勤務やオンライン学習による通勤・通学時間の減少や労働時間の減少が、睡眠時間増加に影響した。都道府県ランキングを見ると、最も長いのが青森県で8時間、続いて高知県(7.95時間)、3位は秋田県・鹿児島県(7.93時間)だ。逆に短い県は、神奈川県の7.57時間で、続いて東京都(7.58時間)、3位は静岡県・兵庫県(7.63時間)である。睡眠時間の長い県は農業県が多く、職住近接の生活パターンである。アフター5の遊びにバリエーションが少ないことも影響しているのかもしれない。都心は全く逆の生活だ。 同じく生活時間を調査しているNHKの国民生活時間調査報告書の指摘も面白い。コロナ禍の変化を年代別にみると、働きざかりの男性30代と女性40代は、夜の時間帯の仕事が減り早寝になった一方、男女70歳以上では、夜にテレビや録画番組を見ることが増えて、睡眠時間が減っているというのだ。そういえば最近、テレビ番組のシニアシフトを強く感じる。BSではリバイバルの映画や歌番組をよく放映している。年寄は早寝早起きというのは一時代前のことであり、今後はシニアの夜更かしもあるのかもしれない。

 今、日本では、「健康」と「労働生産性」という2つの側面で睡眠問題に取り組んでいる。健康づくりのため、厚生労働省では睡眠指針を作成した。子どもからお年寄りまですべての世代で、しっかり睡眠時間を確保し、体内時計のリズムを整え健康を維持しようというものだ。睡眠と労働生産性の問題は、睡眠の質の悪化が生産性を落とすと科学的に論じられ、注目が集まっている。朝日新聞によると、睡眠不足による日本の経済損失は年間15兆円というからびっくりである。寝る間を惜しんで働くことが美徳とされるような時代は終わった。睡眠時間と質を確保する企業ほど利益率が向上するのだ。巷では、安眠のためのベッドや枕、サプリメントや機能性表示食品が売れ、睡眠を可視化するアプリも続々開発されている。仮眠時間を設ける企業や学校も増えているそうだ。

 何時間の睡眠時間を確保するとか、何時までに寝るといった生活行動や睡眠習慣を個人的に目標にしても実現は難しい。何といっても重要なのは、社会全体での生産力向上と労働時間の削減であろう。コロナ禍からの経済回復が労働強化にならないよう願う。

執筆:マダム


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