#060 ショッピング その3(2024年2月24日)

【つぶやき】

モノが売れない時代、
売る側は、情報技術によって巧みに戦略を打ってくる。

モノが溢れる時代、私たち買う側は、口コミ情報を頼りに、
一見コスパ、タイパを意識したかのようではあるが、
差し出されるものに一層受け身になっていく。

情報化は、私たちのショッピングの遊びや楽しみ、
快楽をどう変えていくのだろう。

【コメント】

 情報化により、売る側の戦略も買う側の消費行動も随分と変わってきた。
 売る側は今や、リアル店舗であろうとオンラインであろうと、消費者の購買行動を、逐一把握している。カードによる支払いやポイントアプリからは勿論のこと、リアル店舗ではカメラによる画像データ、スーパーで見かける買い物かごの中を管理ができるスマートカートなどによって、店内での人の動きや一人ひとり買ったものなど、すべて記録され蓄積されているのだ。売る側はそうしたビッグテータを解析してマーケティングに活用し、地域や店の場所、時間帯、ターゲットによって、細かく売れ筋を予測する。
 最近、個人の購買履歴からお勧めの商品を提案してくることがよくあるが、「なかなか私の好みがわかっているね」と喜ぶこともあれば、「よけいなお世話」と気味悪く思うこともある。ヒメが紹介してくれた「選ばない消費」時代には、溢れるものの中から自己選択するよりも、こうした提案型が喜ばれるということらしい。
 情報化、データ化によって売る側の戦略は実に巧みになってきている。買い手側は、自分なりに選択したつもりでいても、実は売る側の手のひらで踊らされているに過ぎないということもある。

 買い手側はどうかというと、家電品や化粧品のように、買い物の前にネット上の口コミ情報から品物の良し悪し、コスパ等を調べて購入するという消費行動が一般的になりつつある。ネット上の口コミは、オンラインで購入する場合は当然のこと、実店舗でも商品購入の失敗を避ける意味では結構役立つ情報なのだ。しかし、このように何もかもわかった状況で購入するということは、リスク軽減にはなるが、ショッピングの新鮮さや驚き、探索的な楽しみを手放すということなのだ。

 今やモノに限らず、本来能動性の高い体験型消費さえも同様の状況になっている。旅行は、過剰な情報化により、ともすると口コミにみる他の人の消費結果や評価を追従するだけに終わってしまうのである。
 そもそも旅は伝聞情報によって触発され、ここでないどこかを想像することから始まった。やがてマスレジャーの時代になって、雑誌やテレビの情報が我々を旅へと駆り立てた。今は、ネット上の口コミやインスタで、実態や評判も事前に確認し、外れの少ない旅が好まれる。旅行に情報は欠かせないが、情報をなぞる旅で楽しさが損なわれることはないのだろうか。

 人々の生活が豊かになったことで消費は遊びとなった。情報化は利便性を高めるが、ショッピングには失敗も面白がれるような遊びの余地を残しておいてほしい。

《執筆:マダム》


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