#073 本屋さん その1(2024年7月4日)

【つぶやき】

仕事帰り、まっすぐ自宅に帰る気になれないときなど、ふらっと立ち寄る本屋さん。

友人との待ち合わせは、決まって駅前の本屋さん。 暇つぶしに持ってこいのちょっと大きな本屋さん。

しかし今、本屋さんが街からどんどん消えていっている。

便利なネット購入をやめて応援したくなるような、魅力的な本屋さんを私のまちにも作って!

【コメント】

 知らないまちを訪れた時、覗いてみたくなるのが地元のスーパーと本屋さんだ。品揃えをみれば、その地域の生活や文化を垣間見ることができる。しかし今、その本屋さんが急速に減少している。みなさんの街でも閉店や撤退が進んではいないだろうか。
 そもそもスマートフォンの登場以来、出版業自体が下落傾向にある。週刊誌や月刊誌は廃刊に追いやられた。一時女子大学生がこぞって買っていた赤文字ファッション誌も、電車のなかでよく見かけたコミック誌も、最近持ち歩いている人に、とんとお目に掛からなくなった。紙は電子に代わり、電子出版市場の9割をコミックが占めているそうだ。そんなことが書店減少に拍車をかけているとのこと。さらに、ネット通販の方が便利ということもあるだろう。
 本屋さんの数は、10年で約3割減少、全国に約11,000店余りとなった。全国の市町村のうち、地域に書店がない無書店自治体がおよそ4分の1に上るということで、文化の基盤に危機感を抱いた経済産業省が、今年の3月、大臣直属の「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げた。地域文化を振興する重要拠点として、本屋さんの運営や特色ある書店を後押ししようということになったそうだ。

 本屋さんの魅力ってなんだろう。本屋さんに行くのは、新聞を読むことに似ている。何の気なしに、隣に並ぶものに目をやると思わぬ発見がある。ネット利用だと、自分の興味あるものをピンポイントで探す傾向にあるが、本屋さんにはネットにはない本との偶然の出会いがある。雑誌、新刊、新書、文庫を一通り眺めるだけでも、得られる情報は計り知れないし、暇つぶしになる。

 最近は魅力的な本屋さんも増えている。書店員さんならではの視点で書かれた手書きのポップや看板には、本への愛情が感じられる。また、配架にも工夫がこらされている。例えば、旅行がテーマのコーナーに行ってみると、ガイドブックのほかに、美しい風景の写真集、地域の歴史本、旅をテーマにした小説、伝統文化や文化人類学の本までもが並べられている。まさに、書店員さんのキュレーション力の見せ場のよう。本棚を眺めているだけで、旅への想像が掻き立てられる。
 カフェスペースがあれば、さらに居心地がいいし、読書会などを開いている書店もある。

 筆者が最近注目しているのは、シェア型本屋さん。こちらで扱っているものは新刊もあるが、多くは自分が読んだいわゆる古本。空き箱ほどのスペースにそれぞれの棚主がいて、自分の推したい本を並べ、共同で販売する。本の街、神保町にあるシェア型本屋さんには、出版社や作家、一般の愛書家が混在して本を並べている。本を眺めながら、その棚主がどんな人か想像するのも面白い。また、地域にあるシェア型本屋さんでは、自分の読んだ本にメッセージを挟んで販売するなど、本への思いや伝えたいことを交換する取り組みもある。本を媒介に人と人のつながりを作り出せれば素敵だ。
 まちには個性的、魅力的な本屋さんが増えてほしい。私たちが余暇時間を豊かに過ごすためにも。

《執筆:マダム》


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